世界は割れ響く耳鳴りのようだ


寝れば良いものを、何となく睡魔を捕まえ損ねて午前4時。奴はいらん時には来るくせに。

さて昨晩の話。仕事始めの今日くらいは仕事も早々に切り上げ、画材と書籍を買いに立川へ。立川、いつ来ても好かん。中央線南武線モノレイルが交差してるとはいえ、いつでも気違いじみる程ヒトがいる。新宿渋谷池袋ならいざ知らず、立川や町田がこの様は、気合を入れたお洒落を見ている様で気が萎える。そんな萎えた気持ちを引き摺って歩く冷凍都市の暮らし。あー何か今日すっげ寒い。画材も本も、別に無くたってどうって事の無いものを、仕事上がりで買い物がしたいという消費欲求のみで出てきてプチ後悔してる有様。俺は何がしたいんだ。ナニをナニして何とやら。
さて俺は俺で現実を見なくてはならない。しかし現実というやつは意外と厄介で、ナニが厄介かというと、そこに主観が入る余地が有る事に尽きる。現実って何だ。俺はうすらでかいだけのただの男で、しょうもない甲斐性無しで、しがない会社員。絵の巧い奴なぞ、世の中に腐るほど居る。何とかって俳優みたいなイケメンでもなければ、何とかってミュージシャンみたいに素敵な歌も歌えない。まさにただでかいだけの木偶之坊。御籤引いたら凶が出る。嫌われる事にばかり慣れてゆくし、でもちゃんと血は出るんだ。痛みも慣れるほど甘くは済まない。ほらもう何言ってるか解らないでしょう。冬、立川の路地を曲がる。ああ好かん街。
優しさ、というものが、俺の中にはあまり無い。無い訳じゃないんだが、純粋培養されてない。他に不純物がいっぱい混じっている。何とか濾過して、下心くらいは混じった状態で、何とか精一杯。それすらも、あまり振舞いたいと思わない。下手な用法はいらん副作用を呼ぶ。単に甘い、とも違うだろう。優しくしたい、という性的衝動。稀にだが、そう思えるヒトが出来る。だとして、相手にどう渡すべきか毎度毎度考えあぐねるし、受け取ってもらえるかも解らない。そうして行き場を失った欲望からドギツイ部分が蒸発して、捨てるに捨てられない廃棄液みたいなのを胸の底の方に揺らしながら、ええと何の話だっけな、そうそう画材を買いに行くんだった。優しくしたい誰かが出来るのは、時につらいって思ったりもする。オノレの欲望が叶わないのがつらい。そんな小汚いトゥルース。ああそうだ、ヒトには言えないがそういう事なんだ。うまくやるには多少は化粧をしなければならない。しかしそういうのももう嫌だと思う。じゃあどうしたい。ええいこの木偶の坊が。
さて用件を済まし、そそくさと駅へ戻る。駅ビルには何か着飾った綺麗なのとか、それに擬態してるそんなに綺麗でないのとかが沢山居る。ヒトビトは幸福そうに見える。俺もそこそこは幸福な筈だ。多くを望むべきではないのか。このままでいいのか。そう思いながら改札を通ろうとして、思いっきりレバーに襲われる。スイカはしっかり当てたんだが、前のヒトとのタイミングが悪かったらしい。流石、元旦から凶を引く男である。ちょっと本気で痛かった。ナイス突っ込み。
俺は俺のしたい事を、身の丈に合わせたペースでしてゆくのみなのだろう。机に向かい写真を選び、ペンを執っては紙を丸める。人生は奈落あり、こんな感じで日々をすごせる幸福を。これは妥協なんかじゃなくて、うまく言えんのだけど、自分の手で触れられる範囲くらいは、ちゃんと触っていたいという性的衝動を大事にしていたい。この衝動が、体温として伝わればいいのだけど。


顔ヲ上ゲテ目ヲ逸ラスナ、有リノ侭ノ世界カラ。赤貝