一切合切太陽みたいに輝く


さて日付は前後するが昨日の話。土日があったらどちらかは出かけるか、位の気持ちで、カメラ片手に散策。といっても華々しい場所は好まず、趣味のうその木彫り(説明すると長くなるがこの時期に一部の神社で入手できる、鷽を模った木彫りのお守り)がないかの散歩のついでにうろうろする感じ。年末にGRを買って以来、そっちばかり使ってたので、今回は一眼レフの相手をする。そういう散歩なのであんまりがっついて撮る感じじゃないんだが、ともかくカメラを持っていれば散歩は限りなく楽しい。
写真について、テクニック的な事はいまだに殆ど解らない。カメラについてる機能も、理解してないものがやたら沢山ある。とにかく撮れれば、眼に見えてるこんな感じが撮れればいいと思っている。で家に帰って、偶然撮れた感じを、次は狙って撮るにはどうしたらいいかな、位の感じ。何故写真を撮るかといえば、(何となく楽しいからは置いといて)最終的には絵の資料かな、と思う。写真だけで何かを表現するのは、俺には難しい。沢山写真を撮る事で、絵心のようなものを蓄積させておくのが、まあ強いて言うと写真を撮る理由かもしれない。あんまり深い考えは無いが。
さて午前ぎりぎりくらいで家を出て、西八王子から自転車で八王子市街へ。途中、ちょっとだけ気になった神社と公園に寄る。そこから中央線でまずは中野。こないだも来たばっかなんだが、中野の北野神社の鷽の木彫り、大中小と3種類あるのだけど、前回間違えて既に持っている小をまた買ってしまい、今回は持ってない中を買いに来た次第。特に誰もいない静かな神社。好きな感じだ。そこから歩いてすぐ、新井薬師。こちらは地元の人だろうか、結構有名どころでもあり北野神社よりは人がいる。新井薬師の商店街を歩く。西武線沿線の商店街はあまり歩いてないけど、すごくいい感じ。今後の散歩の候補に入れておこう。駅前でオールドスク−ルな中華屋でオールドスクールなチャーハンを食う。何ていう事の無い感じだが旨い。
さてそこから西武線〜JRを乗り継いで上野へ。と思ったが折角なので秋葉原で降りる。滅多に来ない場所だから、ちょっと街の風景でもカメラに収めようと思うも、大体その程度の気持ちでは大して食いつきもせず、淡々と撮って、そそくさと御徒町方面へ歩く。昔、秋葉原から御徒町への高架下がくたびれていていい感じだったのだが、コンクリが新しく打ち直されていて、風景的にはつまらなくなっていた。そして御徒町アメ横はこないだ歩いたばかりなので避けて、湯島天神へ。鷽の木彫りはもう終わっていたが、ここは受験の神様だけあって沢山人がいる。ものすごい量の絵馬があって、神様も辛いよね、とドラゴンボールの終わりの変な歌を思い出した。あの歌、何であんなへんな曲にしたんだろう。そんで、神様も辛いよね、の後、なんて言ってるんだろう。学問の神を前にこんなしょうも無い事しか考えないのもどうかと思うが、仕方が無い。出て来いミラクル全開パワー。さて湯島天神自体は狭くて人馴れしててそんなに好きでもないが、縁日はいい感じで、ばばあが出店で売ってたべっこうあめを買う。本当は金太郎飴がうりだったみたいだけど、自分で食べようと思ったので。俺はあんまり甘いものは好きじゃないが、べっこうあめのシンプルな味は何ともおいしい。若干斜陽。そこからぶらぶらと不忍池へ。そこでココロを奪われる。


立ち枯れた蓮の風景。この時期、そんなになってるのなんて知ってたし、実際何度か見てる筈なのに、テンション的なものとの巡り会わせというか、目の前の風景にすっかり魅了される。たまらん。これだ。と思った。カメラを持ち歩いている人が何人かいるが、鳥を撮ってるみたいで、蓮を撮る人はあまりいないみたいだった。それはそうだと思う。俺も鳥にも目が行く。しかし一番ココロが打ち振るうのはこの絶景。大袈裟かも知れないが自分が何を求めてるかを見せられた気にすらなった。これでいいのだと。これを目に焼き付け、これを描いていこうと。妙に興奮して、妙に清々しい気持ちにすらなった。暫く無心に撮り続ける。夕日が2本のビルの陰を伸ばして、あれってアサリを放っておくと出す目みたいに見えるとこみたいだなあ、あれは目じゃなくて吸水管と廃水管なんだよなあ、と心底どうでもいい事を思った。
不忍池にはカモメもいた。別に海にいなきゃあならん訳じゃなかった。好きだぜ、そういうの。

そこから時間があれば、地下鉄に乗ってスカイツリーの下まで行こうと思っていたが、落日が近いし十分満足したしちょっと疲れたしで、散策はここまでにした。帰りは座りたいので東京まで出る。何かいっぱい人がいる。これだけ人がいて、これだけモノがあって、その中で出会えるもの触れられるものはほんの僅かだ。時に不必要な羨望も抱く。しかしヘッドフォンで耳を塞いで、眼をかっ開き、歩ける限り歩いて見れる限りを見ていれば、そこに出来る限りの意識を注入していれば充分かなと、ぼんやり思ったりした。腕は2本、指は10本、目玉は2つ、脚は2本。それが全てなんではなかろうかと。ほらもう何言ってるか、今日は解る。そういう事にして、明日へと頭を傾ける。

一切合切、太陽みたいに輝く。赤貝