8月の現状;別府/広島編

>前回から続く








大分の3日目は雨が降った。それまでの2日間、炎天下で寺巡りだった為、これはこれで有難い。勿論、曇天雨天では光の加減上写真が撮りにくい。まあそれはそれ、疲れもあるしユルくいこうという事で、この日は別府に行く。別府といえば温泉、あまりに有名なんだけど、小雨のパラつくなか着くと、斜面に広がる温泉宿から白い煙がもくもくと立っていて、テンションが上がる。この時は楽しいと思ったんだよなあ。
別府温泉オールドスクール温泉街という風情で、宿は古いものの大きい所が多く、熱海を髣髴とさせる。土産はまず欲しいものがない。団体客を乗せた大きな観光バスが乗り付けて、中から中年以降の客がぞろぞろ降りてくる。路地は結構くたびれていていい感じだが、しかしこの観光地然とした感じはどうにも馴染めない。これは単なる好き嫌いの話。で、軽く済ませようと、目についた“地獄めぐり”なるものだけ見て回る事にする。この地獄めぐりが全く面白くなかった。面白くなさ過ぎて、テンションが下がり過ぎたが故に疲れが出てしまい、とてもしんどかった。もっかい言うけど、地獄めぐり、全く面白くなかった。それも含めて旅の記憶としては楽しい。



その日は雨の中湯布院まで往復して、別府の夜、大分在住の方に教えて頂いた飲み屋を無事見つけ、食って飲む。うまかったです。別府の街は年季が入っていて継ぎ足した秘伝のタレの様な街で、なかなか良かった。翌朝、やっぱり雨。この日は一気に広島まで行く予定。最後の大分をどうするかしばし考えるが、国東半島にリスペクトを込めて、海際にぐるっと回って北上して、そのまま広島を目指す事にした。国東の海にはカブトガニがいるらしい。それ以外に特に得た情報はなかったが、雨のぱらつく中、思いっきりヘトヘトになれた国東での楽しい時間を反芻する。国東、大分、楽しかったなあ。






大分県を抜けて北九州から高速に乗り、あっけない位に一瞬の下関を渡り、対した問題もなく、日没頃に広島へ。広島はほぼ初めて来たんだけど、市街の道が広く、かなり都会。この日はヒロシマの日で、原爆ドームの前の川に灯篭流しをしていた。多くの人が出向いている。俺もその人ごみに紛れ、何度もシャッターを切る。とても美しい。とても撮りにくい。原爆の事、ヒロシマの事、俺はあまりにも知らない。灯篭流しは人々の笑顔を集めていた。考えなど何もまとまらない夜だった。

翌日合流する予定だったバックパッカーのカナダ人達と、偶然原爆ドームの近くで鉢合わせる。実は我々はこの日車中泊の予定だったんだが、彼らのステイ先(友人のアパートらしい、その友人は不在だった)に泊めてもらえる事になった。ワンルームの玄関兼台所のとても狭い空間ではあったけど、シャワーも浴びれたし車で寝るよりずっと良かった。感謝。彼らは実にハートフルかつファンキーで、カタコトの英語で何とかする会話がとても楽しい。デイビッドやマットやザックを思い出す。思い出すも何も、facebook開けば何してるかは解るけど、また会って遊びてえなあ、なんて思いながら限りなく気絶に近い睡眠。


旅の最後の日、広島を出て、呉の先にある江田島というところで泳ぐ。広島から思ったより遠い。イエーイ!ビーチ!というタイプでは勿論ないんだが年に1度くらいは泳いどかないと具合が悪い。まあ普通のビーチだったが、スイカを買ってカナダ人達と食ったのは何とも絶妙な味わいがあって良い体験だった。ぬるいスイカ。今年は何だか知らんが苦手なスイカを沢山食ったな。外は気が狂いそうなくらいに暑いのに、何故か水はやたらに冷たい。ウニの骨を拾った。ウニって英語で何ていうんだろう。ソウメニーニードルス。




泳ぎ終わって江田島を広島の方へ戻る。途中、竹と折り紙で出来た竹ぼうき位の大きさの、何かの飾りが売られていたので、気になって昔からの地元のデイリーヤマザキに寄る。店主のおばあちゃんが、これはお盆の飾りで、亡くなった方がいれば白黒、そうでなければ色のついたものを、玄関やお墓に立てるんだそう。面白いので買って帰っていいですか、というと、折角遠くからいらしたんだからタダでいいのに、とおばあちゃん。いえいえそうもいかないです、というと、店の棚からおにぎりとサンドイッチとジュースをくれた。いいんですかこれ。いいのいいの、孫が来たみたいで嬉しいから。そんな訳で何故か帰りのご飯をゲットした俺は、色んな事があり過ぎて訳が分からん旅の記憶を頭の中で転がしながら、相棒&カナダ人と広島駅で別れ、新幹線に乗る。泳いだのもあって少しうとうとすると、新幹線はすごいもんで、あっという間に俺は新横浜。横浜線に乗り換える俺の手には、おばあちゃんがくれたデイリーヤマザキのおにぎりと、江田島のお盆飾り。実に10日ぶりの我が家は相変わらずモノだらけで、世界で一番落ち着く場所だなあなんて思いつつ、久々にベッドに寝っ転がって旅は終わる。2011年夏旅はやっとこれで終わり。次回はアラバキ編。